二〇〇九年厳冬の二月。香深港フェリーターミナルから、雪とアイスキャンドル二〇〇個を載せたトラックが出発しました。行き先は京都。車は「礼文雪あかりin京都(株)サン・クロレラ」を実施するために、雪あかり実行委員会が手配したものでした。現地に突如として現れた雪だるまに歓声を上げる子ども達。夕方から灯された幻想的なアイスキャンドルに誘われて、多くの京都人が足を止めました。会場では温かいカニ汁や島自慢の極上のホッケの開きが振る舞われ、足湯コーナーも開設。そのお湯に使われたのが「礼文島温泉 うすゆきの湯」でした。
ところで、なぜサン・クロレラなの?と多くの人が思われるでしょう。実はサン・クロレラ(京都本社)グループの創業者、故・中山秀雄氏は礼文島の出身で、現在の代表取締役社長の中山哲明氏とも礼文町は深い関わりを持っているのです。同社はこれまでにも礼文島の森づくりを支援し、過去四年間だけで七五〇本の白樺を寄贈し、礼文町民の手によって植樹を行ってきました。さらに、今回は礼文島温泉の掘削にも多大な寄附をほどこし、そのお礼のために、雪あかりを開いたのです。
 |
礼文島温泉 うすゆきの湯
完成予想図(イメージパース)
建物は「にしん番屋」をモチーフにしたデザインで鉄筋コンクリート2階建。大浴場にはジャグジーや露天風呂、家族風呂、サウナなどを完備。休憩コーナー、和室の交流室のほかに礼文独自の花ギャラリー、観光客向けの情報資料コーナーも設置される予定。
|
いったいいつ頃から礼文に温泉をつくろうという声があったのでしょうか。
「竹下内閣の平成元(一九八九)年の年に一億円のふるさと創生事業があったでしょ。その頃すでに温泉を希望する声が町民から上がっていたのです。しかしながら実現には至りませんでした。昔から利尻は掘っても礼文は掘るな、と言われるほどで、あまり礼文に温泉は望めるものではありませんでした。ところがやがてアメリカで二千メートル以上掘削可能なボーリング機械が登場し、礼文でもにわかに現実味を帯びてきたのです」と語るのは小野町長。
利尻と礼文。地図上ではまるで双子の島のように見えますが、実は歴史も成り立ちも大きく異なる島なのです。利尻は明らかに火山島の形をしていますが、礼文は大きなフランスパンのように横たわっています。この島は古代(二万年前の氷河期が終わるまで)大陸と地続きだったのです。その違いもあって「利尻は掘っても礼文は掘るな」というセリフは、地質に詳しい関係者の間では、長い間常識とされてきました。
ところが平成十七(二〇〇五)年、現在の小野町長が町長選に出馬した際に、自身の選挙公約の一つに“温泉掘削”を掲げたのでした。「温泉でも掘って元気を出しませんか!といって町長になった手前、逃げるわけにはいきませんでした。それ以前にも町民から温泉の要望書が町に届いていましたし…。しかし財源がありません。無理をして国や道の補助金を使ったとしても将来に大きな借金を残すことになる。それだけは回避しなければなりません。そんなある日、サン・クロレラの中山社長とお会いする機会があって、社長から“ところで温泉はどうなったの?”という話になり、正直に“町には掘りたくてもお金がないのです”と言うと“じゃあうちが資金を出しますから、温泉が出たら町でしっかりと経営してください”と、まったく思いがけないありがたい言葉をいただきました。そのほか、全国の礼文島出身者や地元の方からもたくさんのご寄附をいただき、心から感謝しております」と、温泉掘削に成功したいまは、感無量といった表情の町長。
「礼文島で温泉を掘り当てることの難しさはもちろん判っていました。しかし予想はしていたものの大きな誤算もありました。地盤が堅くてなかなか掘削が進まないのです。当初一,五〇〇メートル掘るのに三ヵ月と踏んでいたのですが、一,〇〇〇メートルにも及ばない…。掘りはじめてから半年、ようやく一昨年十二月二十五日に、一,三〇〇メートルの地点から湯温五〇.二度、毎分二〇〇リットルの豊富な湯量を確認しました」。困難な進ちょく状況が続いただけに、喜びもひとしおだったことでしょう。それとも安堵の気持ちでいっぱいだったのでしょうか。「そもそも二五度、毎分二五リットルも出れば“御の字”だと考えていましたが、調査の結果、少なくても今後二〇年間汲み上げ続けても湯量に何ら問題がないことが判りました。宝くじに当たったようなものですね」とラッキーさを強調するものの“町長の執念”が温泉の水脈をつかませたのだと思います。
 |
温泉で島民に元気になってもらいたい−
そう願う礼文町の小野 徹 町長
|
以後、温泉成分分析・効能判定を経て、施設の設計、ポンプの設置、温泉施設着工、源泉地の給湯設備の完成、愛称の全国公募と着々と事業は進み、本年三月には愛称を「礼文島温泉 うすゆきの湯」に決定。建物の完成も近づき、残されている大工事は、源泉地の湯元までのパイプライン設置のみ。源泉の温度が高いため、館内の暖房や給湯・シャワーへの熱利用、一階駐車場のロードヒーティングにも利用されます。
しかし、どうして小野町長はこれほど温泉にこだわったのでしょう。聞いてみました。「島の多くの方は海の上が職場です。仕事で冷えた体を温泉で温めてもらって、元気になってほしいのです。浜での昆布拾いでも寒さが身にしみますから」。ほかでもなく、その言葉は、長寿社会に貢献し、健康寿命の延伸による明るい社会の実現をめざす(株)サン・クロレラのコンセプトと合致しているのでした。
「町民の夢を叶える温泉は、源泉掛け流し。小さめですが露天風呂や家族風呂も完備し、今秋十月いっぱいの工期をめどに完成予定です。それまでの間は、町民の皆様にいち早く楽しんでもらえるよう一週間に一回、温泉を無料でお分けしています。おかげさまで好評で、足腰の痛みが取れたなど嬉しい声が届いています」と泉質と効能にも自信を漲らせています。
なお、町内ではすでにホテル礼文、花れぶん、三井観光ホテル、プチホテル コリンシアンでも、うすゆきの湯を利用しています。
|