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〜 札幌市 〜
Vol.75/平成21年2月発行
Wonderwalker代表のインテリアデザイナーが、トマム・アイスビレッジを設計。
アルファリゾート・トマム アイスビレッジ 氷のホテル
ダイニングルーム
ベッドルーム&リビング プライベート露天風呂
滝口 慎也さん
インテリアデザイナー
滝口 慎也さん

(株式会社 Wonderwalker 代表取締役)

タイル職人の家に生まれて
 どんな建物にも外壁があります。打ち放ったままのコンクリートや塗壁は別としても、建築物の外壁には現在もタイルが多用されています。ビル建築の場合は、そのタイル貼り作業に入るのが仕上工事の始まりの合図となり、やがて足場が外れ、いままでヴェールに包まれていた建物全容が姿を現します。
 インテリアデザイナーの滝口慎也さんは、昭和54(1979)年、苫小牧のタイル職人の家で生まれ育ちました。
 タイルと聞けば誰もが銭湯のお風呂をイメージするかと思いますが、前述のビルの外壁のほか、玄関やトイレ、水回りやテラスなど、いまでもさまざまな所で使われています。近年は優れた接着剤が登場し、工期短縮に大きく貢献していますが、滝口さんの父の時代には「ダンゴ貼り」と呼ばれる貼り方が主流でした。これは下地となる壁の上でダンゴ状のモルタルを伸ばし、その上にタイルを一枚一枚並べて貼っていくやり方です。現在ではこのダンゴ貼りができる職人は、わずかしかいませんが、お父さんは北海道でも名うてのタイル職人でした。ミリ単位で調節を加え、タイルを縦と横にピシッと揃えるその技術は高く評価され、東京からも仕事の依頼が絶えませんでした。

5年間タイル貼りを修行
 インテリアデザイナーになる前の滝口さんもまた、父の仕事を手伝うタイル貼りの職人でした。
 「小学4年生の時、父の仕事の関係で北広島に移り住みました。北広島といっても生活圏は、ほぼ札幌ですね。中学生の頃の僕はひとことで言うとワル。勉強もほとんどしませんでした」と、はなっから高校進学が眼中になかった滝口さん。「いま思えば、自分にとっては大事な大事な5年間で、インテリアデザイナーの道を選んだのも、そのタイル貼りの仕事を経験したからなのです」と。
 「当時の父の仕事の現場はほとんどが東京で、そこで僕はタイルを貼りながらも建築物のいろんな場面を見るチャンスに恵まれました。どのようにできていくのかという施工のプロセスに立ち会うことができたのがプラスでしたね」という滝口さんは、やがて設計やデザインに興味が移ります。「タイルの色一つで建物の印象がガラリと変わってしまうんです。僕の場合、デザインの面白さを“色”で知ったのです」。
 「父はおそらく、あのまま僕が家業を継ぐものだと思っていたでしょうね。でも仕事で札幌と東京を往復しているうちに、いつのまにか札幌の街がつまらないなぁと感じるようになってしまったのです。もっと面白い発想やデザインで、この街を良くしていきたい、そう思うようになりました」。滝口さんは、父への感謝の証を、技能五輪に出場することによって示しました。父に学び、つちかってきたその実力は本物でした。獲得した銅メダルを父にプレゼントするかのようにタイルの道から足を洗いました。そして、商業施設の建築デザインを学ぶために「北海道造形デザイン専門学校」へ2年間通うことに。

インテリアデザイナーへ転身
札幌市内の飲食店の設計デザイン
 卒業後は、札幌にある商業施設設計事務所での採用が決まりました。ところがその事務所の本社が「東京の人員が足りない。すぐに来てくれと声がかかりまして、東京勤務になってしまいました」。その後、半年間はまったく休みなしだったそうで「会社に早く札幌に戻してくれと頼みました」。結局丸1年間札幌に帰ってくることができませんでした。

 ようやく地元札幌で、飲食店を中心に商業施設の設計・デザインの仕事を任せてもらえるようになった矢先(2年後)、今度は札幌支社が撤退というショッキングな出来事に見舞われてしまいます。

 「東京行きを誘われましたが、生まれ育った北海道と札幌のために仕事がしたいという気持ちしかありませんでした。ちょうど支社の専務も札幌に残り独立することになり、以来、数人の仲間とともに昨年の夏まで仕事を共にしてきました」。

 そうして平成20(2008)年8月、ついに独立し、株式会社Wonderwalkerを設立しました。レストラン、バー、カフェ、ショップ、はたまた住宅設計の仕事に明け暮れるそんな滝口さんのもとに、思いがけない仕事が舞い込んでくることに。それはアルファリゾート・トマムの「アイスビレッジ」の仕事でした。

トマム「アイスビレッジ」の氷の教会とホテルの設計を担当
 
「アルファリゾート・トマムは加森観光さんから星野リゾートさんへ経営が完全移行され、より一層若い力を必要としているようでした。アイスビレッジでは“氷の教会”と“氷のホテル”を担当させていただきました」。 トマムの教会といえば、世界的建築家の安藤忠雄氏設計の“水の教会”で有名ですが、それと対をなす氷の教会の設計デザインを任された滝口さんは「気負いはまったくありませんでした。むしろ僕自身がプロジェクトに楽しく参加させていただき感謝しています。ビックリされるかも知れませんが、アイスビレッジは従来トマムの従業員さんだけでつくりあげていたのです。外部に設計デザインを依頼したのは今回が初めてです。トマムの人たちには自分たちでつくりあげるという情熱があり、みんな夢中になって仕事に取り組んでいます。留学で来ている何人かの中国人も一緒になって懸命に汗を流しました」と楽しそうに振り返ります。
 製作中は滝口さんも週に何度も現場へ足を運び、監督としてだけではなく、率先して現場で働く施工の仕事をこなしました。それは、かつてのタイル貼り職人としての魂を呼び覚ましたのかも知れません。父の背中を見てタイルを貼っていたあの頃。そしていま、気球のような大きな風船を膨らませ、水をかぶせて氷を貼る作業。やがて鉄骨一つ使わない、氷だけでできた北海道の冬にだけ現れる幻想的な村「アイスビレッジ」が完成しました。
 おそらくイの一番に父に見てほしいと思った滝口さんの仕事ではなかったでしょうか。
アルファリゾート・トマム アイスビレッジ 氷の教会
株式会社 Wonderwalker
札幌市中央区大通西25丁目3-3
TEL 011-616-2820
FAX 011-616-2821
takiguchi Blog
http://precious-blog.jugem.jp
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